会長再任のご挨拶(加野芳正)

加野芳正

香川大学 加野芳正

 

 この度、日本教育社会学会会長に再任されました。教育社会学会には、私より会長にふさわしい方がたくさんおられるのではないかと思いますが、選挙の結果ですので慎んでお引き受けするとともに、学会の発展のために全力を尽くしてまいる所存です。

 

 日本教育社会学会は、1500人近くの会員を擁するまでに拡大してきましたが、この2~3年は会員の増加も頭打ちになっています。若手の就職状況を考えると、これまでのような高度成長は期待できないように思いますが、ますます存在感のある学会になればと祈念しているところです。ちなみに会員を男女別にみると、男性65%、女性35%となっており、また、年齢別にみると30歳代と40歳代でほぼ半数を占めています。それだけに女性会員、若手会員の方々にも学会運営の重要な役割を担っていただくとともに、教育社会学会というフィールドで会員相互の研究交流が進み、より質の高い研究業績が産み出されるように舞台を整えていきたいと思います。

 

 日本教育社会学会はIFEL(教育指導者講習)の受講者が中心となって1948年に結成されましたので、2018年に創立70周年を迎えます。これを機会に周年事業を行うことが先の総会で承認され、いよいよ活動を開始することになりました。この2年間は、周年事業を軌道に乗せることがもっとも重要な課題です。その周年事業では、(1)学会の歴史に関する資料の収集と整理、(2)先輩会員へのインタビュー調査、(3)学術的な課題による論文集の刊行、(4)英語による論文集の刊行、の4つの事業を考えています。どれもたいへんな事業で、多くの会員のみなさまの協力を仰がなければなりません。その点ではご負担をおかけするのですが、他方で学会としてのプレゼンスを高めるチャンスでもあると思うのです。例えば、英語による論文集刊行を考えれば、日本の教育社会学を世界に発信する良い機会となるはずです。世界のなかで、教育社会学会の会員が1500人もいるような国はまれです。それだけの会員を擁している学会ですので、これまでどのような研究が行われてきたのか、日本の教育社会学の特徴と独自性がどこにあるのかを整理し、英語論文として公刊することはとても意義あることだと考えています。また、先輩会員へのインタビュー調査や資料収集は、教育社会学の足跡を辿るというだけでなく、そのことを通して教育社会学の現在と未来を考えるという作業にもなります。すでに、50周年事業で第一世代の方々へのインタビューが行われているので、今回は1960年ぐらいまでに入会された第二世代の方々へのインタビューを実施します。高度経済成長からオイルショックを経て低経済成長へと突入した時期、あるいはバブル経済とその崩壊など、経済的な視点でみただけでも日本社会は大きく変化してきました。こうした社会変動のなかで先輩会員は、教育社会学をどのように構築してこられたのでしょう。肉声を文字化して後生に残していく作業はとても意義あることと考えています。

 

 最後に、1500人の会員を擁する学会ですので、日常的な業務もたくさんあります。そうした業務を無難にこなしていくことが学会運営にとってとても大事です。西島央事務局長を初めとする事務局の皆さまと力を合わせ、遺漏のないように進めていきます。また、周年事業だけでなく、学会活動の国際化、若手研究者の育成等にも力を入れていきたいと思います。学会運営にとって欠かせない業務は、「紀要の刊行」と「年次大会の開催」ですが、会員の過度な負担にならない範囲で、さまざまな事業を行っていくことが、教育社会学会の活性化につながっていきます。会員のみなさまの声に耳を傾けながら、同時に、会員のみなさまの期待に応えられるよう頑張りますので、御協力を宜しくお願いします。