会長就任のご挨拶(藤田英典)

東京大学 藤田英典

2002年1月

 

 今回、はからずも学会会長を仰せつかりました。光栄なことと思う反面、気が重かったことも事実であります。と申しますのも、一昨年、学会創立50周年記念事業特別委員会委員長の職責を皆さまのご協力の下、なんとか果たし終えました時点で、今後は一会員に戻って研究に専念したいと思っていたからであります。いくつものやりかけの研究に区切りをつけたいという思いが強かったからであり、また、学会や学問の発展にとっても、会員諸氏がそれぞれの持ち場で多彩な研究・実践活動を着実に推し進めていくことが重要だと思っているからでもあります。

 

 しかし、今さら言うまでもないことですが、学会活動は、その運営の任に当たる多数の会員の献身的な活動によって下支えされています。誰かがその役割を果たさなければならないとしたら、一時期その役割を担うことも会員としての務めであろうと思い、会長をお引き受けすることにしました。とはいえ、学会運営の多くの労を実際に執られるのは、会長よりも、理事、事務局、委員会の方々です。その先生方のご尽力により、学会及び教育社会学研究の更なる発展に資することができれば幸いと思っていますので、何卒よろしくお願い申しあげます。

 

 数期前からの会長も折に触れて言及して来られたように、日本教育社会学会はいまや会員数1300人を擁し、さらに増え続けている大規模学会になりました。学会運営事務の効率化を図るために前期から事務機構の分散化が行われ、また、学会大会も今年から2日制に移行することがすでに決定されています。昨年11月から飯田事務局長のリーダーシップの下、新体制での学会運営が始まりましたが、この間、連日のように事務局・委員会メンバーの間でメールによる連絡・調整・打ち合わせ・諸手続等の作業が進められています。前期もそうであったのだと思いますが、その作業は膨大なもののように思います。学会員のみなさまには、そうした状況をお酌み取りいただき、ご協力・ご支援下さいますよう切にお願い申しあげます。

 

 21世紀を迎え、教育改革・大学改革が急ピッチで進むなか、教育研究のアカウンタビリティが問われています。教育社会学は戦後半世紀、教育社会や教育問題の基礎研究を推し進め、学問的にも政策的にも幾多の貴重な貢献をしてきたと思いますが、近年の改革動向と社会の関心には、研究の適時性や有効性という点で、これまでにない強い不満と期待が入り混じっているように思われます。そうした動向に迎合すべきだとは思いませんが、基礎研究はもちろん、とくに政策研究・実践研究の充実や研究の国際化という点で、これまで以上の貢献と発展が期待されているように思います。そうした期待を踏まえ、研究者の倫理に則して、会員諸氏が多彩な研究活動を推し進め、学会の活力を高め、教育研究の発展を担っていくことができればと思います。

 

 会員のみなさまのご活躍を祈念し、併せて、学会運営へのご協力とご支援をお願いして、会長就任の挨拶とさせていただきます。